一人でするべき?それとも他の人と一緒にするべき?トレーニングへの最適なアプローチを決める方法
持久力スポーツは孤独なスポーツになりがちですが、競争心のあるサイクリストたちの「集団精神」から学ぶことは多くあります。彼らが集団を作るのには理由があります。集団を作ると空気抵抗が劇的に減るため、はるかに効率的に走行でき、お互いのモチベーションを吸収し合うことで精神的な高揚感も得られるからです。
他選手の存在は、偽りの天井を打ち破り、一人でいる時には挑戦することすら億劫になるような心理状態から解放し、挑戦するのに十分なモチベーション(あるいは痛みからの気晴らし!)を与えてくれます。
とはいえ、集団の中では一人でいる時のような内省はできないかもしれません。人里離れたトレイルランニングで15マイル(約24km)も走っている時にひらめいたアイデアをすべて逃したくはありません。また、自分の感情を臆することなくエネルギーに変え、それが他人からどのように見えるかを気にしない能力もとても重要です。
ランナーでありロッククライマーでもある私にとって、社会的な意味では全くかけ離れたこの2つの活動が人生に存在していることは有り難いことです。この2つの活動を組み合わせることで、両方の中間点を見つけることができるのです。
ランニングでは、常にソロになりがちです。同様に、クライミングではバディを組むのがデフォルトになりがちです。ほとんどの場合、現状を維持することはパフォーマンス上、理にかなっています。しかし、別の選択肢があることを常に思慮することで、物事を掛け合わせるための刺激が得られ、小さな違和感から得られるメリットを逃さずに済みます。
私の経験則
毎週、私はランニングとクライミングのトレーニングスケジュールを、個人セッションとグループセッションの組み合わせで具体化させています。その日の割り振りは計画的に決めています。グループの雰囲気は、すべてのランニングタイプに合うわけではありませんし、クライミングの目的が、たとえビレイヤー※を必要としないものであっても、仲間がいない方が快適に感じるとは限りません。
※ビレイヤーとは、クライミングにおいて地上でロープを操作し、クライマーの安全を確保する人のことを言います。
仲間とのトレーニング時間と個人トレーニングの時間をどのように配分するかを決める際の経験則があります。
早く行きたければ、一人で進みなさい。遠くまで行きたければ、みんなで行きなさい。
遠出をするとき、仲間意識が私の成果に最も大きな影響を与えるようです。良い仲間がいると、時間があっという間に過ぎます。長距離においては、エネルギー、感情、モチベーションの劇的な変化を引き起こす傾向にあります。想像を絶するような目標に向かってひたすら努力する長い時間の間に、多くのことが変わります。一人で未知のジェットコースターに乗る必要がないという安心感は、ストレス管理に大いに役立ちます。
さらに、信頼できるパートナーが一緒にいると、問題解決がより効果的になります。私は、スポーツクライミングの重要なポイントでビレイヤーと思考プロセスを話し合うと、より早くクリアすることができます。長距離ウルトラマラソンでは、ペースメーカーも同じ役割を果たします。胃がむかむかしたり、ハムストリングが痛み始めてくじけそうになっても、他の人が近くにいれば、すぐに諦めてしまうことを防げます。
一方で高強度の運動になると仲間がいることは、やる気を起こさせるというよりは気を散らすもののように感じてくるかもしれません。私は、「自分の世界」に一人で籠るのが好きです。 なぜなら本当に自分の限界に陥っている状態では、自分の意図した方針から少しでも外れているものや人は、背景として自分の意識から消えていかなければならないことを知っているためです。
画像クレジット:Ben Rathbun ©
その状態で不快感の中、動き続けることを選択し続けるには、非常に集中力が必要です。そのため、ほんの少しでも集中力が欠けると、パフォーマンスが低下します。私たちの貧弱で必死な脳は、自分を拷問にかけるのを止めさせるために、気を散らす可能性のあるものすべてにしがみつこうとします。あなたがこのような感覚を選んでいることを、脳はどうやって知るのでしょうか?
メンタルトレーニングは、外部からの雑念を減らすのに大いに役立ちます。そのため、誘惑はそれほど強くありません。しかし、HIIT※の日は「なぜ最初からトレーニングを簡単にしないのか?」と言われるように全員がまったく同じ考えでない限り、仲間を置いていくことを考えてください。低強度のトレーニング中は、気晴らしになる仲間がいるほうがよりありがたく感じるでしょう。
※HIITとは、High Intensity Interval Training(高強度インターバルトレーニング)の略称で、高負荷トレーニングと小休憩を繰り返し行うトレーニングのことを言います。身体を限界まで追い込むことによって脂肪が燃焼しやすい状態を維持し、体脂肪の減少と筋肉の増量効果が得られます。
なぜトレーニングに仲間が必要なのか?
雑談は時間をつぶす以上の効果があります。 トークテストは運動強度の調整に利用できるという根拠に基づいて、心拍数が十分に低く保たれ、効果的な有酸素運動ゾーンに入ることができるのです。時計から目を離すたびに心拍数が上昇していることに気づいたら、友人を誘ったり、休みの日に母親に電話したりしながら、自分の呼吸について責任を持つようにしましょう。
責任感について言えば、仲間がいるとそもそも運動を始めやすくなります。 運動のインセンティブに関する研究では、トレーニング仲間がいる人はいない人よりもジムに通う頻度が35%高いことが分かりました。
1日の予定が何であれ、トレーニングセッションの最初の数分が最も辛い部分であることは、誰もが知っています。私は、なかなかやる気の出ないセッションのためにトレーニングパートナーを手配します。例えば、体内時計のせいでベッドから出られない夜明けのパトロールランや、汗をかいたり震えたりすることが確実な一日となる極端な天気でのトレーニングなどです。その瞬間の快適さに抗うのはその場では難しいので、「未来の自分」のためにバックアップを依頼しておきます。
他の人と一緒にトレーニングすることで、新しい運動スキルのヒントも得られます。私は、ジムでのタンデムセッション中に友人からコツを教えてもらいましたが、その友人からお気に入りのパワー持久力クライミングトレーニングの方法をパクりました。また、父の後ろをパタパタと歩きながら、理学療法で父が学んだストライドパターンを真似することで、膝の腸脛靭帯炎(ランナー膝)を未然に防ぐことができました。他の人に効果があるものが、必ずしも自分に効果があるとは限りませんが、それでも貴重な情報であることに変わりはありません。私のように、大人になってから始めたアスリートの多くは、高校のクロスカントリーの練習で正しいフォームを学んだことがありません。今がチャンスです!
一人でトレーニングする
一人でトレーニングするということは、会話を内省に置き換えるということです。自分のボディランゲージに耳を傾けることで、その空白を埋めることができます。 数値だけでなく、さまざまな努力レベルがどのように感じられるかを学ぶチャンスです。
画像クレジット:リナ・シンプソン ©
自覚的運動強度(RPE:Rating of Perceived Exertion)は、トレーニングにおける自己制御ツールとして有効です。練習すれば、 心拍数データと一致し 、個人差も考慮されるからです。ある人の7/10は、他の人の7/10とは異なります。それが自分の身体にどのように現れるかを理解するまでは、あなたは指標に縛られることでしょう。身体は絶えず語りかけています。他にも多くのことが起こっていて、何も理解できないことがよくあります。一人でトレーニングする時間は、その雑音を静めてくれます。
トレーニングパートナーは、あくまでパートナーです。一緒にトレーニングすることはできますが、代わりに自分の身体をトレーニングしてくれるわけではありません。持久系アスリートには、 自分自身に責任を負えるだけの忍耐力が必要です。モチベーションを高めてくれる人が周りに誰もいない時、ラストに繰り返される上り坂にどうやって立ち向かうのでしょうか。
それは、午前2時にエイドステーションに着いた時と同じ気持ちです。キャンプチェアでくつろぎながらピザとビールを飲んで眠ったほうが、無理に身体を前に進め続けるよりも❝マシ❞だと思った時です。どんなに熱心なペースメーカーでも、あなたに代わってその判断を下すことはできません。その時点では、熱意だけではあなたを説得させることはできないでしょう。ソロセッション中には、自身の忍耐力を磨きましょう。
このようなことはさておき、「最善」のトレーニングとは実際にトレーニングを行うことです。理想的なシナリオが実現するまで待つのではなく、できるところからトレーニングを始めることも時には必要です。
一人で真昼の太陽に立ち向かうか、トレーニングセッションを完全に先延ばしするかの選択を迫られた場合、一人で行く方が、何もしないよりはほとんどの場合、良い結果をもたらします。数年前までは、仕事のシフトの合間を縫って、午後3時頃にしか走れませんでした。距離を稼ぎたければ、自分のライフスタイルに合わせなければなりませんでした。仲間がいれば、もっと効率的に距離を稼げたのでしょうか?そうかもしれない。しかし、贅沢は言えません。ビジネスにおいてもトレーニングにおいても「完了」は常に「完璧」に勝ります。
参考文献
ルーシー・ヘインズ
エリートランナー、登山家、ジャーナリスト、スポーツ心理学コンサルタント
ルーシー・ヘインズは、競争力のあるウルトラマラソンランナーであり、一流のロッククライマーであり、PRECISION(プレシジョン)アスリート チームの誇りあるメンバーです。
彼女はパートナーのベンと、とても声の大きい猫のパックと一緒に、コロラド州グランドジャンクションに住んでいます。トレーニング、食事、睡眠以外の時間 (つまりほとんどの時間) は、アウトドア業界のジャーナリストとして、またアウトドアアスリート仲間のスポーツ心理学コンサルタントとして働いています。
彼女のお気に入りのプレシジョン製品には、PF30カフェインジェル、PF30ミント&レモンチュー、PH1500電解質タブレットなどがあります。
※本記事は英語の記事を翻訳したものです。原文を読む
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