持久系アスリートはレース後のアルコールを避けるべき?
アルコールは祝杯の代名詞です。チームや個人のアスリートの間では、「仕事は終わった、さあ、お祝いの始まりだ!」というアルコール文化が広く定着しています。レース後のビール、シャンパンスプレー、南国でのレース後のフルーティーなカクテルなど…数えればきりがありません。
レースによっては、レース中やゴール地点でビールが提供されることもあります。一緒にお酒を飲むことは、多くの人にとって社会的な絆を深めることであり、その日の大きな成果を振り返りながらリラックスしてくつろぐ方法だと考えられているのです。
お酒を飲むな!と言われる前に慌ててこのウィンドウを閉じようとしているあなた、少々お待ちください。この記事はアルコールを完全に断つよう説得するものではないことをご理解ください。むしろ、アルコールが持久系アスリートに与える3つの大きな影響(他にも多数あります!)を詳しく分析し、自分にとって最善の決断を下すための知識を身に付けてもらうための記事になります。
1. 回復
アルコール摂取に関して最も考慮すべきポイントのひとつは、摂取量です。この記事では、少量から中程度の摂取量(一度に1~3杯)を想定してみましょう。
大きなトレーニングセッションやレース後の回復は、持久力トレーニングの柱のひとつです。次の大きなトレーニングに備えるために、身体は消耗した炭水化物、グリコーゲン、タンパク質を補給する必要があります。
アスリートが身体の回復に必要な栄養素を摂取しないと、怪我や病気、その他さまざまな副作用が起こるリスクが高くなります。
具体的には、運動直後に20〜25gのタンパク質を摂取し、これを4時間ごとに繰り返すと、骨格筋へのタンパク質の給が最大化されることがわかっています。
では、アルコールは回復にどのような影響を与えるのでしょうか?
パー氏らによる研究では、身体活動量の多い男性グループを対象に、レジスタンストレーニング(レジスタンス運動)と持久力トレーニングを組み合わせたコンカレントトレーニング(CT)を1セッション実施しました。この研究の目的は、同化細胞シグナル伝達と筋原線維タンパク質合成(MPS)率に対するアルコールの影響を調べることでした。
研究者らは、アルコール摂取は、タンパク質と一緒に摂取した場合でもトレーニング後のMPS率を低下させると結論付けました。したがって、アルコールは骨格筋の同化反応を抑制し、回復とトレーニングおよび/またはパフォーマンスへの適応を阻害すると考えられました。
一方でバーンズ氏(2014)は、レース後に0.5g/kgのアルコールを摂取しても回復に影響を与える可能性は低いことを発見しました。体重57kg(125ポンド)のアスリートを例にとると、これは標準的なドリンク約1杯分に相当します。
2. 水分補給
人体の60%は水で構成されており、適切な水分レベルを維持することが非常に重要であることは、ほとんどの人が知っています。持久系アスリートにとって、最適な水分補給状態を維持することは、最高のパフォーマンスを発揮するために不可欠です。
アルコールには利尿作用があり、尿の排出を増加させ、脱水症状や電解質の不均衡を引き起こすことがよくあります。少量のアルコールでさえ水分補給レベルを狂わせる可能性があります。
ナトリウムは汗で失われる最も一般的な電解質であり、筋肉が収縮し、消化器系がエネルギーを分解し、体液バランスが適切で、脳が最適に機能し、適切に回復するためには、ナトリウムを適切な範囲に保つことが不可欠です。
ユリカリ氏ら(1974)による古いが優れた研究では、電解質の変化はアルコールによる二日酔いの発生にはあまり影響せず、むしろ脱水症状によって引き起こされる可能性が高いことを示唆しています。
エヴァンス氏は、「水分補給が第一の目的である場合、運動後のアルコール含有飲料の摂取は避けるべきである」と述べています。つまり、レース後にアルコールを摂取すると、正常な水分補給状態への回復が遅れる可能性があるということです。
そして、 PH1500電解質がアルコールの脱水症状を克服する(およびそれに伴う二日酔い… 少なくとも私はそう聞きました)ための有用な回復手段であると考えられているのはそのためです。
3. 栄養不足
アルコールには、栄養価のない「空の」カロリー(cal)が1gあたり7cal含まれています。これに対し、炭水化物/タンパク質は1gあたり4cal、脂肪は1gあたり9calです。飲むアルコールの種類にもよりますが、モスコミュールなどのお洒落なミックスドリンクを飲む場合、糖分も一緒に含まれます(ジンジャービールはすっごく美味しいけど…)。
飲酒はエネルギー代謝、消化、栄養素の吸収に影響を及ぼし、微量栄養素の欠乏や慢性疾患の発症につながる可能性があります。これにはビタミンC、ビタミンA、鉄分の欠乏が含まれます。持久系アスリート(特に女性)は、すでに鉄欠乏のリスクにさらされています。
また、アルコールの過剰摂取は、ビタミンB12、チアミン、葉酸などの栄養素を吸収する腸の能力も低下させます。アスリートに必要な栄養は、エネルギー消費量や身体へのパフォーマンス要求が高まることで一般的な人々以上に必要とされるため、微量栄養素レベルを維持することが不可欠です。
これらのことは、あなたにとって何を意味するのか?
これは、アルコール摂取がアスリートに及ぼす影響(他の例としては、身体組成、軟部組織の損傷、免疫機能、グリコーゲンの再合成など)の包括的なリストからは程遠いですが、3つの主な考慮事項を強調しています。
大きなトレーニングやレースが終わった後に大人の飲み物とともに祝うことは、多くの人にとって楽しく、社交的で、生き甲斐のあることです。しかし、まずはその舞台裏で何が起こっているかを理解しておくことは重要です。
レース後のカクテルやビールに手を伸ばす前に、水分補給とエネルギー補給の戦略を立てておくことでその後の身体の状態に大きな違いが生まれます。結局のところ、私たちはアスリートとしての目標を達成するために多くの時間、お金、エネルギーを費やし、私たちの身体はゴールラインに到達するために一生懸命働いているのです。
参考文献
- PH1500は二日酔いを治せるのか?
- アルコールをやめるとパフォーマンスに驚くべき効果がある理由
- アルコールがウエストラインに与える影響を最小限に抑える方法
- ノンアルコールビールはアスリートにとって効果的な回復ドリンクなのか?
ブルック・ショール
スポーツ栄養士
ブルック・ショールは、アリゾナ州立大学でコミュニケーション学の学士号、栄養学の学士号と修士号を取得した登録栄養士です。
彼女は、2012年にモンタナ州ボーズマンとアリゾナ州スコッツデールにGrit Sports Nutritionをオープンして以来、オーナーを務めており、特にランニング、ウルトラマラソン、サイクリング、トライアスロンの分野で持久力スポーツ コミュニティの重要な一員となっています。
ブルックは、最高のパフォーマンスを発揮するためのシンプルで効果的なエネルギー補給計画をアスリートと協力して開発することに熱心に取り組んでおり、OG Precision Hydration Sweat Testersの1人でもあります。
彼女自身も熱心なアスリートで、17年間にわたりレースやトライアスロンに参加してきました。最近はボストンマラソンに出場し、この夏は70.3距離に復帰するほか、50Kウルトラマラソンにも初挑戦する予定です。
※本記事は英語の記事を翻訳したものです。原文を読む
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